なぜAI時代に「情報基盤」が必要なのか

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AIが普及すると、企業にとって重要になるのは「AIを使っているかどうか」だけではありません。

ChatGPTやGemini、Claudeなどの生成AIは今後も進化し、文章作成、調査、比較、問い合わせ対応、業務支援など、できることは増えていきます。

しかし、AIの性能が上がっても解決できない問題があります。

その会社についての情報が外から利用できる形で存在していなければ、AIにも分からないという問題です。

これは、高知のように中小企業や小規模事業者が多い地域では、特に大きな意味を持つと考えています。

AIが賢くなっても、存在しない情報は正確には答えられない

たとえば、ある会社に「この加工を100個お願いできますか」と問い合わせたとします。

営業担当者なら、

「その材質なら対応できます」
「100個ならこの設備を使えます」
「通常はこのくらいの納期です」
「図面が完成していなくても相談できます」

と答えられるかもしれません。

ところがWebサイトには、

「各種金属加工に対応しています」

としか書かれていない。

この場合、人に問い合わせれば分かりますが、Webサイトを見ただけでは判断できません。AIに聞いても、根拠になる情報がなければ正確には答えられません。

AIの性能不足というより、AIが使える元情報が存在していないことが問題です。

生成AIが高性能になるほど、この違いはむしろ目立つようになります。

十分な情報を持つ会社については、AIがその情報を整理し、質問に合わせて説明できます。一方、情報がほとんど公開されていない会社については、どれだけ優れた技術や商品があっても、AIから見れば判断材料が少ない会社になります。

だからAI時代への対応には、「最新のAIを導入する」という話とは別に、自分たちについてAIが利用できる情報を持つことが必要になります。

地方企業には「情報がない」のではなく、「外に出ていない」ことが多い

高知で企業や事業者と関わっていると、Web上にある情報と、実際に話を聞いて分かる情報との間に大きな差があることがあります。

Webサイトを見ると、会社概要と簡単な事業紹介しかない。

ところが経営者や担当者に話を聞くと、

「実はこういう特殊な案件もできます」

「この商品はこういう人がよく買っています」

「県外からの依頼にも対応しています」

「こういう相談なら、うちより別の会社に頼んだ方がいいです」

といった具体的な話が次々に出てくる。

つまり、情報を持っていないわけではありません。人が持っています。

社長が知っている。営業担当者が知っている。現場の人が知っている。常連客なら知っている。

しかし、その情報が担当者の頭の中や商談、電話、メールの中に留まっている。

これまでは、それでも事業が成立していました。

地域内で会社同士がつながっていて、「この仕事なら○○さんに聞けばいい」と人が仲介してくれたからです。

地方では、この人的ネットワークそのものが非常に強い情報基盤として機能してきたとも言えます。

ただし、人の頭の中にある情報は検索できない

この地域のつながりには大きな価値があります。

一方で、県外の企業や初めて高知を訪れる旅行者、新しく地域に来た人は、そのネットワークを持っていません。

たとえば県外企業が、

「高知でこの加工ができる会社を探したい」

と思っても、その会社を最初から知っていなければ検索できません。

検索して会社のWebサイトにたどり着いても、対応できることが詳しく書かれていなければ候補に入れられません。

これは観光でも同じです。

「高知で子どもと楽しめる場所」

だけなら検索できます。

しかし、

「雨の日でも利用できて、未就学児と一緒に行けて、食事もできて、車で行きやすい場所」

となると、それぞれの施設について相当詳しい情報がなければ比較できません。

実際には条件を満たす施設があったとしても、その情報が公開されていなければ見つからない。

存在していることと、見つけてもらえることは別です。

AIによって「会社名を検索する」以外の探し方が増える

ここはAI時代に特に重要になる部分です。

従来のWeb検索では、利用者自身が検索キーワードを考え、検索結果からWebサイトを開き、自分で情報を読み比べることが一般的でした。

生成AIでは、もっと具体的な状況をそのまま伝えられます。

「高知県内で、小ロットの試作品から相談できて、この材質を加工できる会社を探している」

「高知旅行で、70代の両親と小学生の子どもが一緒に楽しめて、雨でも行ける場所を探している」

「従業員30人程度の会社で導入できて、専門担当者がいなくても運用できるサービスを比較したい」

このように、「誰を知っているか」ではなく「自分が何をしたいか」から探すことが容易になります。

これは地方にとって大きな可能性があります。

知名度の高い企業だけでなく、条件に合った企業や施設が候補になれるからです。

ただし、そのためにはAIが判断できるだけの情報が外部に存在している必要があります。

「高い技術力があります」「お客様に寄り添います」「高知らしい体験を提供します」だけでは、具体的な条件との照合ができません。

何ができるのか。誰に向いているのか。どんな条件があるのか。いくらなのか。どこまで対応できるのか。

こうした具体的な情報が重要になります。

地方企業が全社、立派なWebサイトを作り続けるのは現実的ではない

では、すべてWebサイトに詳しく書けばいいのか。

理屈としてはその通りです。

きちんと設計されたWebサイトを持ち、必要なページを作り、情報が変わるたびに更新し、FAQや事例も継続して追加できるのであれば、それは非常に良い方法です。

ただ、地方の中小企業や小規模事業者すべてにそれを求めるのは現実的ではありません。

Web担当者がいない。文章を書く人がいない。制作会社へ毎回依頼するほどでもない。通常業務が忙しい。そもそも何を書けばいいのか分からない。

結果として、Webサイトを数年前に作ったままになったり、SNSだけが更新されたり、詳しいことは「お問い合わせください」になったりします。

これは企業が情報発信を怠っているという単純な話ではありません。

情報発信そのものが本業ではない企業に、継続的なメディア運営を求めてきた仕組みにも無理があります。

だから、AIOHubでは「毎週記事を書きましょう」という発想を中心にしていません。

最初に持っている情報を整理する。

その後、実際に質問されたことや、新しく伝えたくなったことが出てきたときに追加する。

情報を発信し続けるというより、必要になった情報を適切な場所に置いて残していくという考え方です。

地方では、一社だけ整備するより「地域全体の情報量」を増やす意味も大きい

もう一つ、高知のような地域で重要なのが、一社単位だけで考えないことです。

たとえば、ある製造会社一社だけが詳しい情報を公開しても、それ自体には価値があります。

しかし、地域の製造会社50社について、

設備、加工技術、得意分野、対応ロット、材質、試作対応、県外対応などの情報が整っていたら、できることは変わります。

県外企業が、

「この条件に対応できそうな高知企業は?」

という探し方をできるようになります。

観光も同じです。

100施設について、営業時間と住所だけではなく、対象年齢、所要時間、雨天対応、外国語対応、予約の必要性、体験内容、移動手段などが整えば、旅行者の条件に合わせて地域全体を提案しやすくなります。

協会なら加盟企業。

商社なら取引先。

自治体なら地域企業や施設。

観光協会なら観光事業者。

それぞれが持っている情報を整備することで、個社の情報発信から、地域や業界そのものを検索・比較・提案できる情報基盤へ広げられる可能性があります。

人口が少ない地域だからこそ、説明を何度も人が担うコストも大きい

地方にはもう一つ現実的な問題があります。

人が少ないことです。

営業、採用、問い合わせ対応、観光案内、行政手続きなど、これまで人が説明してきた仕事を、今後もすべて人だけで担い続けられるとは限りません。

だからといって、すべてをAIに任せればいいわけでもありません。

重要なのは、人が毎回答えなくてもよいことと、人が判断すべきことを分けることです。

営業時間、料金、利用条件、基本的な手続き、対応可能な範囲など、すでに答えが決まっていることは情報として整えておく。

その情報をWebから読んでもらったり、AIに説明させたりする。

一方、個別見積もり、例外的な相談、重要な意思決定などは人につなぐ。

情報基盤を作ることは、人を不要にするためではなく、人が同じ説明を何度も繰り返さなくても、その人が持っている知識を使える状態にすることでもあります。

地方の弱みを埋めるだけでなく、地方の強みを外に出せる

高知の企業が東京の企業と同じ量の広告を出したり、同じ人数の営業担当者を配置したりすることは簡単ではありません。

しかし、AIが情報を探して候補を比較する場面では、必ずしも会社の規模だけで決まるとは限りません。

利用者の条件に合う情報が存在し、それを正しく理解できれば、これまで知られていなかった企業が候補になる余地があります。

これは地方にとって重要です。

地方には、規模は小さくても特定分野に詳しい企業があります。地域特有の商品や体験があります。長年の取引で蓄積された知識があります。

それらを全部東京と同じような広告競争に乗せるのではなく、「必要としている人の条件と、自分たちができることが一致することで見つかる」状態を増やす。

AI時代の情報整備には、そうした可能性があります。

もちろん、情報を公開しただけでAIが必ず紹介してくれるわけではありません。検索順位やAIサービスでの引用を保証することもできません。

それでも、外部から利用できる情報が存在しなければ、その可能性そのものが生まれにくいことは確かです。

AI時代への対策は、AIツールを導入することだけではない

「AI時代への対応」というと、ChatGPTを社員に使わせる、AI研修を受ける、業務を自動化するといった話が先に出てきます。

それらも重要です。

ただ、もう一つ考える必要があります。

AIが自分たちについて調べる側になったとき、自分たちは十分な情報を持っているか。

会社名は分かる。

住所も分かる。

事業内容も一行だけ書いてある。

しかし、「この会社は自分の条件に合うのか」と聞かれた途端、判断材料がなくなる。

それでは、AIが進化しても企業側の価値を十分に伝えることはできません。

だからLuxuCareでは、AI時代に必要なのはAIそのものだけではなく、AIが使える情報基盤を企業や地域の側に作ることだと考えています。

そして高知のような地方では、それは単なるAI対策以上の意味を持ちます。

人の頭の中にある知識を残すこと。

説明する人が少なくても情報を届けられるようにすること。

知名度ではなく条件から地域企業を見つけてもらえる可能性をつくること。

一社では難しい情報整備を、協会や自治体、商社などと一緒に進めること。

地域の中では知られている価値を、地域の外からも理解できる状態にすること。

地方に情報がないのではありません。
すでにある情報の多くが、まだ外から使える形になっていない。

私たちは、そこにAI時代の地方企業や地域にとって大きな可能性があると考えています。

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